〜ポートランドでのボランティア活動を通じて〜

〜ポートランドでのボランティア活動を通じて〜

井上 愛 (著)

私は、ポートランドに滞在して半年が経ちます。知人が「近くでボランティア活動をしているので参加してみないか」と誘ってくれ、4ヶ月前から週1回参加するようになりました。今回はそのボランティア活動について、また、その活動を通じて感じたことを紹介したいと思います。

私が参加しているボランティアは、ポートランド州立大学より徒歩6分程の、St. Stephen’s Episcopal Parishという教会での「Clay Street Table」(以下、CST)という活動です。この組織では、ホームレスの人々や、日頃の食事に困っている人々に、週数回無料で食事を提供しています。組織のマネジメントは教会の牧師が行っていますが、参加しているスタッフのほとんどは、近所の人々で、近隣の学校や他教会から来ています。私は「Saturday breakfast」という、毎週土曜日に朝食を提供する会に参加しています。

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ある日のメニュー

スタッフの人数は毎週変動しますが、およそ15名程度で約200人分の朝食を作っています。食材は、オレゴン・フードバンク(国や企業、有志市民等から寄付された食糧を提供する非営利組織)、近隣企業・市民からのCSTへの寄付等で賄われています。

ボランティア中に個人的に苦戦しているのはやはり英語です。私は英語力の向上と大学での研究のために滞在していますが、授業での比較的「丁寧な」英語とは異なり、ボランテイアの現場では容赦無くスピードの早い英語でスラングや教科書等にはなかなか出てこない生活に根ざした用語、表現、固有名詞等が飛び交いますので、聞き取れない場面が多々あります。

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食堂の様子

例えば、飲み物のジュースが無くなり、リーダーにジュースのストックはどこにあるかを尋ねた時、「ああ、Eggnogが地下の冷蔵庫にあるよ」という回答が返ってきました。Eggnogが何かを知らず、Eggから連想してパンケーキの材料か何かかと勘違いした私は、「材料では無くて飲みもの!」と答えてしまい、「だからEggnogが地下に…」というやりとりを何往復かしていたところ、別のスタッフから「Eggnogは飲みものだよ!こちらでは有名なの!」と説明してもらってやっと誤解が解けたということもありました。

 

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ボランティアスタッフ

先述の通り、ボランテイア活動の対象者はホームレスの方が多いのですが、ポートランドの街を歩くとホームレスを見かけることが多いなと感じます。2015年1月時点でのポートランド都市圏(ポートランド市、グレシャム市、マルトノマ・カウンティー)の人口は約70万人[i]ですが、うち3,801人はホームレスだそうです。比較対象として東京を見てみると、人口約1300万人に対して1,719人[ii]です。なお、アメリカ全土のホームレスの数は564,708人で、オレゴン州全体では13,226人、州別に見るとオレゴンは上から9番目の数です[iii]。日本は全国で7,508人[iv]、全人口に対するホームレスの割合は約0.00006%となります。アメリカは約0.0018%であり、割合としては日本の約30倍となります。

ポートランドにホームレスが多い要因として、リベラルな風土で治安も良く、ホームレスへの支援が充実しているため集まりやすいのではないか、とCSTのマネージャーから伺ったことがあります。実際、ポートランドで行われているボランティア一覧サイトを覗いてみると、CSTだけで無く、他の教会、非営利団体等多くの団体が、様々なアプローチでホームレス支援を行っています(シャワー・トイレ・洗濯の場の提供、健康診断、シェルターの運営、住宅確保等)。

ポートランドは、市政に対する積極的な市民参加がなされていると言われていますが、ホームレス支援のみならず、街・公園の清掃、環境保護、イベントスタッフ等多種多様なボランティア活動が非常に盛んなことからも、地域社会に対する個々人の意識が高いという印象を受けています。

ボランティア活動に話をもどしますが、なぜ、ポートランドの人々が当たり前のことのようにボランティアをするのかかが不思議で、CSTの高校生の参加者に理由を聞いてみました。すると「だって、楽しいじゃない?ここで友達もできて、おしゃべりもできて、自分の居場所の一つとなっているよ。ホームレス問題の根本的な解決にならないのはわかっているけど、根深い問題だからこそ、すぐにどうこうできるものでは無いじゃない?だからこそ、今この瞬間は、私は友達と会うために楽しみながらご飯を作って、ホームレスの人々には当面の空腹を満たしてもらって…お互いに良いことがあるのなら、それで良いのかなって。」と返ってきました。また、CSTのマネージャーは以前「この活動の目標の一つは、コミュニティーを作ること。ホームレスになる原因は色々あるけれど、お互いがお互いを気遣い合うコミュニティーがあれば、ホームレスになることを防ぐことができる可能性が高まると思っている。その結果、そのコミュニティー・社会は全員にとって良いものとなる。」と話していたことがあります。これらの話を通じて、自分自身が楽しみたい、快適に暮らしたい、居心地の良い場所にいたい、という思いが、地域社会への高い意識につながっているのだなと感じました。

自分自身の幸せのために、社会に対してどう行動すべきなのか。社会全体の利益のために、個々人にどうアプローチしたら良いのか。しとしと降る雨に傘もささずに歩く人々を、ダウンタウンのカフェの窓からぼんやり眺めながら、今日も考えさせられています。

 

[i] Portland Plan Atlas

http://www.portlandonline.com/portlandplan/index.cfm?a=288104&c=52257

グレシャム市ホームページ

http://greshamoregon.gov/city/city-departments/economic-development/expand-and-locate-here/template.aspx?id=282455

 

[ii] 厚生労働省 平成24年「ホームレスの実態に関する全国調査検討会」報告書

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002rdwu-att/2r9852000002re1x.pdf

 

[iii] アメリカ住宅都市開発省 The 2015 Annual Homeless Assessment Report (AHAR) to Congress

https://www.hudexchange.info/resources/documents/2015-AHAR-Part-1.pdf

 

[iv] 厚生労働省 ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000083546.html

 

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