~ アワー・ユナイテッド・ビレッジ (Our United Villages) PART II ~
(ジョシュ・メツラー&西芝雅美 著)
前回のアワー・ユナイテッド・ビレッジ (Our United Villages: 以下OUV) PART I ではOUVの歴史と手作業で行う解体作業の効果などについて話をさせていただきました。今回はOUVのコミュニティ活動について触れたいと思います。
Community Legacy Program (コミュニティ・レガシー・プログラム)
OUVのリ・ビルデイング・センター(ReBuilding Center)は、古い建造物を解体し、再利用できる建築資材・部材などを回収・販売することで、大型廃材を減らし持続可能な雇用を創出するビジネスです。しかしOUVの価値はそれだけでは有りません。前回の記事でも紹介したように、シェイン・エンデイコット氏を始め、OUVを立ち上げた人々の本来の目的はコミュニティに活気を与えることです。OUVのコミュニティレガシープログラム(Community Legacy Program)とよばれるコミュニティ活動の本部は、リ・ビルデイング・センターの隣に位置する、レンガ色に塗られた建物内にあります。
コミュニティレガシープログラムは、地域・コミュニティーが独自に活動をする為の支援をするプログラムです。プログラム自体は大きく3つの活動、すなわち(1)ストーリーの共有のための活動(Legacy Stories)(2)アイデイアの共有のための活動(Sharing Ideas)、そして(3)活動の為のツールの共有(Tools)からなっています。
それぞれの活動ごとに明確なビジョンがあり、活動内容も異なりますが、共通しているのはどのプログラムも無料で住民に提供されているという点です。コミュニティレガシープログラムについてはアウトリーチ及び戦略コーディネーターのショーン・オコナー氏(Sean O’Connor)(写真)からお話を伺いました。
Legacy Stories (レガシー・ストーリー)
このプログラムのモットーは『人と人の距離を縮めるのは物語である(The shortest distance between two people is a story)』。このプログラムでは、 人々が自分たちの日常生活の中で遭遇した地域づ くり話、地域を良くする為に頑張っている団体 や個人の紹介、自分が今没頭しているコミュニテ ィプロジェクトなどについて語るストーリー・テ リング(Storytelling)の場を提供しています。地 域と社会を良くする為の取り組みを互いに語り共 有することで、様々なバックグラウンドをもった地域住民の間に仲間意識が芽生え、ともに学 ぶことが出来るという理念に基づき、多くの人々から物語を集め、ホームページなどを使い広 く周知しています。物語の種類は多岐にわたり、若者の活躍を紹介するもの、芸術と文化に関 するもの、コミュニティ活動関連、地域の歴史、環境・サステナビリティ等多くのテーマが取 り上げられています。ショーン氏の話によると、重要なのはこうした物語の発信源が地域の住 民達自身だということです。プログラムの中心は飽くまでも地域の住民達で、OUV の役割は地 域に潜在する物語を掘り起こす為の手助けをすることだ、と彼は言います。結果、住民同士が 物語を共有することで地域の力がより強くなっていくのです。
Sharing Ideas(シェアリング・アイデア)
シェアリング・アイデア(Sharing Ideas)はプロジェクト の活動家を講師として招待し、プロジェクト発想のインス ピレーションがどのように具体的なプロジェクト構想へと 変化していったか、またそれぞれのプロジェクトでいかに コミュニティを巻き込んでいるかを共有するイベントで す。
プロジェクト紹介をするのは NPO、ボランティア団体、学 生などで、プロジェクトの内容も様々です。洪水災害の被 害者の記録を残すためのプロジェクトから、環境問題、都 市型農園の立ち上げなど、数多くの体験談が共有されてき ました。 実際にプロジェクトを行っている当事者から話を聞き、ネ ットワーク構築をすることで、コミュニティ内にも同じよ うに行動を起こすきっかけが作られます。プレゼンテーシ ョン形式が主ですが、ショートフィルムフェスティバルと いったイベントも催しています。もちろん全て無料です。
Tools(ツール)
レガシー・ストーリー(Legacy Stories)やシェアリング・アイデイア(Sharing Ideas)などを通してインスピレーションやアイデアを得た人が、次の段階へと進んでいく上で必要とするのはやはり専門知識とノウハウ。実際にプロジェクトを立ち上げようとした時に、十分なリソースがなく諦める人も多いのではないでしょうか。こうした人々を対象に様々なリソースやサポートを無料で提供するのが、ツール(Tool)の共有活動です。例えば新規アイデアの開発の為のワークショップ、コミュニティづくりの為のツールを紹介する手引書、コミュニティリソース図書室などがあります。コミュニティづくりの為のツールを紹介する手引書には、イベント開催の手引き、アンケートの作成・実施方法、アセットマッピング(地域のリソースを地図化したもの)等、様々なツールが盛り込まれ、活動を立ち上げる際に必要な情報を様々な面から提供しています。
デザインと人と哲学
たくさんの話を聞きながら施設の内外装を眺めていると、いくつかの発見がありました。まずはリ・ビルデイング・センターを囲む低めの鉄柵です。普通に歩道を歩いていると気付かないのですが、よく見るとそのデザインに笑みがこぼれます。鉄は鉄でも、パイプやレンチやボルトといった使われなくなった工具を溶接して作られているのです。話を聞くと、OUV発足時に市から柵の設置を指導された際に、ボランティアスタッフの一人が出した案からきているそうです。Part Iで紹介したシェイン氏は言います。「経験が5分でも5年でも、スタッフの意見には平等に耳を向けるんだ」。目立たないところにでも遊び心に溢れるDIY精神と、スタッフの意見を尊重するOUVの姿勢がはっきりと存在するのです。
もう一つ驚いたのが、コミュニティ・レガシー・プログラムのオフィスでした。というのも、天井、床、壁全てがドアを敷き詰められて出来ているので、中へ入ると出入り口がどこなのか良く分からなくなるのです。実にカラフルで、昔の住人付けたのであろうステッカーやサインも目につきます。全てのドアにはストーリーがあり、開けた先には新たな出会いが待っている、そうシェイン氏は言います。
1997年以来続けてきた今でも当時の熱い想いが冷めることのないシェイン氏とショーン氏。OUVの歴史を語る中でシェイン氏が言った言葉が今でも頭から離れません。
「人にOUVを紹介するとき、今でもわくわくして鳥肌が立つんだ」
目の前で彼の話を聞いている私にとって、OUVのストーリーは彼らをはじめ多くのスタッフの方々の信念と想い無しで語ることは出来ないのだと確信した瞬間でした。
*アワー・ユナイテッド・ビレッジ (Our United Villages) のウェブサイトはこちらからどうぞ。
「人と人の距離を縮めるのは物語である」「経験が5分でも5年でも・・・・平等に耳を傾ける」
響きました。ありがとうございます。
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>長岐孝生さま、
コメントありがとうございます!
実際に頑張ってられる方の言葉には重みがありますよね。何もないところから積み上げてこられている方々からは学ぶことが沢山あります。
読んでくださって嬉しいです。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします(^^)
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