2018 O-JaLoGoMa Program Summaryが完成しました!

2018年 O-JaLoGoMa プログラムのサマリーが出来上がりました。O-JaLoGoMaとなってから二年目、そしてJaLoGoMaプログラムとして15年目を迎えたこのプログラム。どのような内容だったのか?ぜひご一読ください。

 

プログラムの概要

 2018年8月26日から31日の6日間、ポートランド州立大学(PSU) 主催の『まちづくり人材育成プログラム』 +『クリエイティブ・ビジネス・ワークショップ』(英語名:JaLoGoMa)を開催した。

6日間のプログラムのうち、5日間はポートランド州立大学行政学部長、西芝雅美氏による『まちづくり人材育成プログラム』、最終日の6日目は、オプションにて、都市戦略コンサルタントの山崎満広氏による『クリエイティブ・ビジネス・ワークショップ』を開催。プログラムは、ポートランドのまちを知るため「市内探索」に始まり、レクチャー・センッション、そして、ポートランドのまちづくりに関わっている方々の見解や意見を聞く「サイトビジット」によって構成されている。また、毎日の振り返りを行い、さらに「ビアストーミング」にて熱心な意見交換やディスカッションも行った。最終日は、ポートランドのまちづくりについて参加者全員でディスカッションをし、参加者のまちと比較し、ポートランドの地元の方々に向けて「まち自慢・仕事自慢」を紹介してもらった。

今年は、北は北海道から南は沖縄まで、「住民主体のまちづくり」に関心を持つ、計16名の市区町村職員、大学教員・職員、個人事業主、NPO従事者、ビジネス関係者の方々にご参加いただいた。

 

8/26(日)Portland Downtown Exploration

ダウンタウン探索

初日は、ポートランドの「場」の感覚をつけてもらうため、四つのグループに分かれて公共交通機関を利用しつつ、ポートランド市内を探索しながら、現地スタッフの通訳のもと、住民にインタビューを行い、地元住民の生の声を聞いた。グループの一つは、街の雰囲気の変化を見るため、ウォーターフロント、オールドタウン、パール地区、ノブヒルを巡り、三名のポートランド住民から話を伺ったところ、街を気に入ってはいるものの、近年の変化については否定的な印象があるとのこと。プログラム初日に市内探索を行うことで、プログラム中に講義で扱われた内容をより良く理解する上で必要な幅広い観点でポートランドを観察することができ、プログラムの中でプレゼンテーターへ質問する際の参考材料にもなった。

 

8/27(月)Site Visit1: North to South by MAX

サイトビジット1:ポートランドの北から南へ(ポートランドの市民参加の進化)

 

サイトビジッドは、ポートランドが直面している課題にポートランドの行政、NPO、ビジネス関係者がいかに住民を主体に据えたまちづくりを通して取り組んでいるかを知ることがねらいである。

 

TriMetの建築士であるボブ・ヘイスティングス氏及びPSUのパブリック実践・研究センター(CPS)シニアフェローで建築家の柳澤恭行氏の案内のもと、ポートランドの市民参加型都市開発の歩みを学ぶため、MAXイエローライン・オレンジラインに沿って各地を訪問。駐車場の建設予定地を住民運動により市民の集う場へと変更させたパイオニア・コートハウススクエアに始まり、MAXの駅の建設に反対であった住民との対話により調和的なまちづくりを実現しているケントン地区、産学官の連携により先進的な地域形成を行っているサウス・ウォーターフロント地区、MAXの駅の建設を機にポートランドを参考とした独自の発展を目指すミルウォーキー市を訪問。また、住民団体と協働で以前の景観を失わない駅の建設を達成したパークアベニュー駅を訪問し、市民活動家も交えて話を聞くことができた。

 

8/27(月)Beerstorming

ビアストーミング

プログラム2日目の締めくくりは、コミュニティ活動家で、JaLoGoMaスタッフの、チップス・ジャンガー氏の自宅でのビアストーミング。チップスは 緑豊かなオークグローブ地区の自然環境保護を推進する住民グループ「アーバングリーン」の創設メンバーで、チップスと長年ともに活動を続けてきたエド・リドル氏、チャーリー・ステファン氏、更に、O-JaLoGoMaスタッフのダン・ヴィッツィーニ氏、ランディ・ボネラ氏を加え、三つのグループに分かれ、様々なトッピックについてディスカッションが行われた(各グループにはボランティア通訳が参加)。参加者はデッキに備えられたテーブルに座り、チップスの仲間が持ち寄った食べ物や飲み物、そして外の景色を楽しみながら、リラックスして時間を忘れるほど熱心に話し、21時過ぎまで ディスカッションは続いた。ビアストーミング」については、「JaLoGoMa Times」の記事をご覧ください。

 

8/28(火)In-Class Mini Reflection Session and Site Visit Information 

クラスセッション

プログラム3日目の午前中のクラスセッションの前半は、前日のサイトビジットについて振り返りのディスカッションを行った。前日にボブ・ヘイスティングス氏等から伺った行政の住民への対応について、また、住民(コミュニティ)からの思いや視点を踏まえた上で住民に向き合い、住民からの声をしっかり聞くことの重要性について議論がなされた。

後半は、JaLoGoMaスタッフのダン・ヴィッツィーニ氏から、午後に訪問するReBuilding Centerの概要説明があった。ReBuilding Centerが目的としているのは、コミュニティをさらに良くすること。建物の廃材の寄付や回収してそれらを売ることで収益をあげ、その収益をコミュニティづくりや社会的プログラムなど、福祉目的に資する事業のために利用されている。そのほか歴史や事業概要についても詳しい説明があり、サイトビジットの事前学習を行った。

 

8/28(火)Site Visit 2: ReBuilding Center

サイトビジット2:リビルディングセンター

午後は、Rebuilding Centerを訪問し、廃材の整理等のボランティア活動をした後、ボランティア・コーディネーターにお話を伺った。Rebuilding Centerの特徴は、廃材を売ることで得た収益をコミュニティづくりに利用したり、雇用を生んでいるという点である。廃材を売るだけでなく、その廃材を利用して新たな家具を生産し、製品を低価格で販売もしている。また、「ディコンストラクション (Deconstruction)」という、各パーツを再利用できるように家屋を解体する技術を持っており、そうした特殊技術を伝授するための人材育成の場を提供したり、解体の請け負い事業等も行っている。こうした活動を通して市民がコミュニティに参加できる場を提供しながら、資源の再利用にも貢献しているのだ。実際にボランティア現場を体験して学べる貴重な機会だった。

 

8/29(水)Site Visit 3: SW Corridor Transportation Plan

サイトビジット3:サウスウエスト コリドー交通計画

プログラム4日目の午後は、Maxの延線に伴う「サウスウエスト・コリドー交通計画」の予定地のポイントとなる三か所をアメリカ定番の黄色いスクールバスで視察した。バーバーブルバード沿いのアンダーアーマー社前、マルトノマビレッジとの分岐点となるフレッドマイヤー(Fred Meyer)スーパー近辺、そして、バーバートランジット駅に停車し、実際にその予定地を自分たちの目で見て、感じながら、この計画 遂行においてどのようにコミュニティと関わっているか等メトロ広域政府勤務のブライアンとJaLoGoMaスタッフのランディによる説明を参加者は熱心に聞き入つていた。参加者からの質疑応答が続き、その高まった気持ちでOLD Barn(レストランバー)、でのビアストに移動した。このレストランバーはこの近辺では長年親しまれているが、この計画の為に立ち退く可能性がある 。

 

8/31 (金)Mitsu’s Workshop

山崎満博氏によるクリエイティブ・ビジネス・ワークショップ

メインプログラム後に行われた山崎満広氏の『クリエイティブ・ビジネス・ワークショップ』では、ビジネスでのイノベーティブな観点を学んでいただくワークショップを開催。ワークショップのイントロでは、ポートランドの概要および変遷が写真や映像と共に紹介され、続いてイノベーティブにビジネスを行っている企業、Zibaを見学した。参加者は「イノベーティブ」を視覚的に感じた後、アクティビティを行い、昼食を挟んで次の企業訪問へ向かった。

看板のない「Portland Pedal Power」社の訪問では、会社が目指している「360度のビジネス」について詳しくお話を伺った。セッション最後のまとめでは、企業がなぜ変わらないか、何が必要か、何のための変化かをそれぞれ考え、今後の「イノベーション」のために1日のワークショップで気づいたことを参加者同士でシェアすることができた。

 

8/30(木)15th Year Anniversary Celebration

15周年記念イベント

2004年に東京財団・早稲田大学・PSUとのパートナーシップのもとで開始した本プログラムは、今年で15年目を迎えた。2016年までの13年間は、市区町村職員を育成するプログラムとして中堅層の公務員のみが対象だったが、2017年からはPSUの単独プログラムとなり、公務員、NPO関係者、大学関係者、その他まちづくりに関心のある方は誰でも参加できるようになった。過去15年間のプログラム参加者総数は300名を超え、190もの市区町村からの参加があった。今回の15年式典では、参加者の皆さんにそれぞれの「まち・仕事自慢」を行って頂き、ポートランドに住む住民の方々に日本のまちづくりについて知ってもらい、対話を楽しむ機会を企画した。当式典には80名以上の方々にお越しいただき、これまでのJaLoGoMaの歴史、今後の行方を共有する非常に良い機会となった。

 

参加者の声

  • 「キラキラした美談だけでなく現場の実情を知ることができた。常に対話的な環境であり参加者全員を尊重してくれた場であった。参加者の不安を取り除く万全の事務局体制がとても印象的。」
  • 「海外のプログラムだからこそ、実際に関わった人の口から語られるメッセージや想い、パッション、土地の空気感など文献に書かれていないものすべてを感じ取れた。普段の自分の生活からの越境によって参加者同士の絆が深まった。」
  • 「唯一の正解を求めるための話し合いではなく、それぞれをすり合わせていく感覚を味わえた。言語のバリアを感じさせない質の高い通訳体制であった。」
  • 「アメリカ(ポートランド)だから、日本だから関係なく、抱えている課題は似たところがあり、何かを実現するためには常に相手のことを考え、そして”忍耐力をもって”行動することが大事だと参加して得ることができた」

 

JoLoGoMa プログラムとは

 

プログラムマネージャー紹介:西芝雅美 Ph.D.

 

 

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大学がまちづくりの最先端となる  ~ポートランド州立大学の先行事例を元に~

大学がまちづくりの最先端となる  ~ポートランド州立大学の先行事例を元に~

早稲田大学教育学部2年 2017年3月〜2018年3月PSUで留学

ポートランド州立大学パブリックサービス研究・実践センター、インターン生

工藤城二 (著)

 

「大学」のイメージを一言で表すと何だろうか。”勉強する場所”であろうか、はたまた”人と交流する場所”であろうか。感じ方は人それぞれだろうが、私の中には「まちづくり」というキーワードが浮かんでくる。

大学と「まちづくり」に何の関係があるのだろう、と疑問に思う人もいるかもしれない。しかし積極的にまちづくりに関わり、街で大きな役割を担い、多くのコミュニティと繋がっている大学が、アメリカ合衆国西海岸オレゴン州に存在する。

その名はポートランド州立大学、通称PSU (ピーエスユー)と呼ばれる。学生およそ[1]27229人[2]192の学部学科で構成されている。文系理系問わず、入学時に全学生が192ある選択肢の中から自分の専攻を選ぶことができる。オレゴン州からだけでなく、全米から、さらには全世界から毎年たくさんの学生が入学する。

キャンパスとしてのきっちりとした敷地の仕切りはなく、ポートランドの街と大学が一体化している。毎週土曜日にはファーマーズマーケットが行われたり、頻繁にイベントが催されたりなど、誰でも気軽に大学構内に足を運べるようになっている。”人の集まる場”を積極的に作る、そんな大学だ。

近年ポートランドはサステイナブルな都市開発の最先端地や全米一住んでみたい街として知られてきている。その背景には、行政、ネイバーフッドアソシエーションなどたくさんの団体や人の長年に亘る活動の積み重ねがある。中でも、ポートランド州立大学は学生と街をつなぐというとても重要な役割を担い、街にたくさんのイノベーティヴでクリエイティヴなアイデアを与えるきっかけを作っている。

1991年オレゴン州知事によって、ポートランド州立大学は”Engaged Universityに認定された。Engaged Universityとは[3]互恵的に交流し、探求し、さらに知識、専門知、資源、情報を応用することを通じて、外部の支持者やコミュニティとの直接的な相互作用に貢献する大学である。つまりPSUは生徒のために学問の質を高めるのみならず、街をも巻き込んで、街と大学がともに協力し成長するという高等教育の在り様を追及していく大学であるということだ。ポートランド州立大学のモットーは「Let Knowledge Serve the City (知識をもって市に貢献せよ)」で、大学で教授されている知識を机上の空論でとどめず、実際に街にも浸透させようという意思が詰まっている。

PSUのEngaged Universityとしての最大の取り組みがSenior Capstoneである。これは卒業必須単位となっており、文系理系問わず全学部生この授業を履修しなければならない。Senior Capstoneの特徴はすべての授業がCommunity-Based Learning(コミュニティベース教授法)でおこなわれており、学生たちはコミュニティの活動に携わる。コミュニティが実際に行なっている行動のサポート、直面している問題の解決にコミュニティと一緒になって取り組み、学習成果は学生が実際に関わるプロジェクトを中心に設定される。クラスは総計89種類あり、生徒はその中から自分の興味のあるものを一つ選ぶ。要するに一つのクラスに色々な学部の学生が集まり、お互いの知識を共有しながら授業を進めていくのだ。

具体的にSenior Capstoneの授業の例を幾つか紹介しよう。私は、ポートランド州立大学パブリックサービス研究・実践センターで行われた2017年の

1 2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップの一環でトライオン・クリーク州立公園を訪れた際の一枚

2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップ、トライオン・クリーク州立公園 にて

コミュニティ・ベース教授法のワークショップにインターンとして参加し、そのプログラムの一環としてSenior Capstoneの授業の一つである「Outdoor and Environmental Education (アウトドア活動と環境教育)」の話を聞くことができた。このクラスはトライオン・クリーク州立公園がパートナーで、学生がそこに週に数回訪れ、公園に訪れる小学生をガイドしながらレクチャーを行う。と同時にこの公園が抱えている問題を解決し、向上を図るプロジェクトを実行するという内容であった。

 

このクラスのインストラクターであり、トライオン・クリーク州立公園長であるゲイブ・シオシップ氏は「このクラスを受講した学生は今まで現場で子供達に教えた経験がなくても、クラス終了時にはガイドの仕方、子供達の注目の集め方など、具体的で、効率的な教授方法をしっかりと習得している。それ以外にも州立公園のエコシステムなどの学術的知識や、協働の仕方などの社会生活能力も学んでおり、学生一人ひとりがボランティアとして一生懸命働いてくれ、この州立公園をより良くするための新しいアイデアなども積極的に出してくれる。」と話してくれた。

別のSenior Capstoneの例で「Collaboration: Boys and Girls Club(ボーイズ&ガールズクラブ)」というクラスがある。このクラスは、NPO団体であるボーイズ&ガールズクラブがパートナー団体で、学生はそれぞれが専攻として学んでいることを子供達に教えるワークショップを毎週2〜3時間行い実践を通じて子供に物事を教え、指導する手法を学ぶ。例えば、アートを専門としている学生は子供達に絵の描き方を教えたり、生物学を専攻としている生徒は生態について子供達が理解できるレベルで話をして、子供達が生物学に興味を持つよう動機づけを図る。

こうした、プロジェクトを通じた実践型のクラスで学生はガイドや教授体験などを経験し、一方でコミュニティのパートナー団体は実際の労働力と様々な学部から来る学生の考えが融合されたイノベーティヴなアイデアを得る事が出来る。Senior Capstoneのクラスでは学生とコミュニティの双方に利益がもたらされる、いわゆる「互恵性」が成立しているのだ。

ではなぜポートランドでは他の地域とは違って、大学とコミュニティが積極的に協力し街の問題に取り組む試みが継続し、成功しているのだろうか。

5 広島修道大学グローカルイノベーションプログラム、オレゴン・バスプロジェクト訪問

広島修道大学グローカルイノベーションプログラム、オレゴン・バスプロジェクト訪問

ポートランド州立大学パブリックサービス研究・実践センターでは広島修道大学のグローカルイノベーションプログラムに在籍する学生を対象に10日間のポートランド研修を行っているが、今年このプログラムでポートランドを訪れた広島修道大学三年の岩本瀬里奈さんはこう話してくれた。「私は将来カフェを開きたいんです。日本でこの話をするとどうしても資金などの現実問題の話を先に持ち込まれます。でもポートランドでこの話をすると、全員やってみたほうが良いと背中を押してくれます。たとえ上手くいかず失敗したとしてもまたやり直せば良いと言ってくれるんです。」

彼女の話しからわかるようポートランドでは失敗を許容する文化、即ち、失敗を恐れず何でも

4 広島修道大学グローカルイノベーションプログラム、Day2スカベンジャーハントでのソルアンドストロー

広島修道大学グローカルイノベーションプログラム、Day2スカベンジャーハント中のIce cream shopにて

試してみる、それで失敗してもまた試行錯誤して次に活かせばいいという考え方が根付いているように思われる。ポートランド市民は”完璧”を求めるのでなく、むしろとりあえず試してみて、その軌道修正を徐々に行っていき、うまく機能しなかったら新しい策を考え、それをまた試す。その繰り返しで前進している。このポートランドの街の雰囲気が、ともに作業する学生とコミュニティの背中を押しているのではないだろうか。

また、ポートランドの人々はシビックプライドが強いとよく指摘される。”Keep Portland Weird (ポートランドをずっとヘンテコなままにしよう)”というキャッチフレーズに表現されているように、ポートランドの人々は自分たちの街に誇り持ち、他の街とは違う特別な街にしようと試みている。そのため人々の社会問題意識も非常に高い。自分たちの手でどうにか社会問題を解決しようと考え、コミュニティ団体を立ち上げ、実際に行動に移す人々はたくさんいる。「誰かがやってくれる」のではなく「自分がやる」という意識を持っている人が多くいるのだ。

私は、この「失敗を許容する文化」と「シビックプライド」が大学とコミュニティをつなげているのではないかと感じる。シビックプライドを持ってポートランドのために貢献したいと思っている大学とコミュニティが、お互い力を合わせとりあえずチャレンジしてみる。そして失敗したとしても、また違う案を考え、成功するまでチャレンジし続ける。大学とコミュニティが「街をより良くしたい」という思いを根底に、同じベクトルを向いているからこそ実現しているのだ。

2 2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップで日本の教授の方々とビアストーミング

2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップで日本の教授の方々とビアストーミング

自分の街をより良くしようと考えるシビックプライドを持つ人々の中で、また失敗しても次があると思わせる文化環境下で、大学が新たなアイデアを生み出し、それをコミュニティが支える。最終的にこれらが街の発展につながっているのだ。

これらの大学と街による努力の最大成果物がSenior Capstoneであろう。Senior Capstoneを経験して、将来ポートランドのために貢献したい、何かをしたいと思う学生は少なくない。またこれを機に自分で起業する学生もたくさんいる。Senior Capstoneはまちづくりを促進させるのみならず、実質的にポートランドを担う次世代の生産にも繋がっているのだ。

3 2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップ、セリーン宅でのホームパーティー

2017年コミュニティ・ベース教授法ワークショップ、セリーン宅でのホームパーティー

今、日本にはポートランド州立大学のようなEngaged Universityがどれほどあるだろうか。大学が人の集まる場づくりを行い、コミュニティ発展を手伝い、生徒の実践経験値のためにCommunity-Based Learningプログラムを作る。これらが実質的にまちづくりに貢献する。

日本の大学でも学生が地域の問題に対してコミュニティと協力して活動を起こす授業が増えれば、地域の発展のみならず、学生の実践的経験にも繋がって、より「知識をもって市に貢献する」学生が増えていくのではないかと思う。

 

参考文献

[1] About Portland State University

https://www.pdx.edu/about-portland-state-university

[2] Portland State University Departments

https://www.pdx.edu/directory/index

[3]21世紀における大学と社会 – Engaged University 南山大学大学部教授 五島敦子 P3

http://www.uejp.jp/pdf/journal/09/9_01goshima.pdf

OBOG寄稿 第一弾  〜鉄のよろいが砕けた瞬間~シティリペアの成功の秘密とポートランドのアドバイスを通して~

〜鉄のよろいが砕けた瞬間~シティリペアの成功の秘密とポートランドのアドバイスを通して~

岡田直晃(著) 2009年、2016年参加

Portland 私が週末学校の研修に参加していたのは2009年。しかしその時はJaLoGoMaには参加できませんでした。2016年の週末学校でOBと市民の参加が認められ、7年越しの願いが叶いました。この7年の間、私は環境を大きく変え、考え方や生活も一変しました。週末学校に参加していた時は、津市東京事務所の職員でした。しかし当時は市町村合併直後であり、庁内の合言葉はいつも「一体感の醸成」で、思想的な統制がかかっていました。勤務時間外に社会人大学院に通うことや、人事課が選んだ人材以外に週末学校に参加することは「良くないこと」として許されませんでした。

そんなこっそり参加していた週末学校で「ポートランドに行く」とは言えず、チャンスを逃しましたが、今思い返すとJaLoGoMaに参加できたのが2016年でよかったと思います。もし2009年に参加していたら、見えていなかったもの、見過ごしていたものが無数にあり、貴重な機会を数多く棒に振っていたでしょう。

津市を退職後、民間のコンサルタントに転職し、公共施設やインフラの老朽化対策に携わりました。さまざまな自治体に外から携わり、形だけ整えようとする担当者とはぶつかるなど、通常の行政コンサルタントではありえないような動きもしていました。ある自治体では「話を聞きたい」と呼ばれて行ってみると、「まだ予算がつかないが、話を聞かせてくれ」と危機感を持った一部の職員の方が印刷室に集まっていて相談に乗ったこともあります。それはそれで充実していましたが、やはり心のどこかでもう一度自治体職員としてやってみたいという気持ちがあったのかもしれません。

DSC_10092012年、習志野市が任期付職員の応募を行いました。公共施設の老朽化に本格的に取り組むということで、私はこれに応募し、採用していただきました。習志野市では、公共施設の老朽化が進んでおり、予算の削減で大規模改修や建て替えが進んでおらず、建築後40年を経過した施設が80%以上に達していました。25年間の計画を策定する中で、統廃合にも触れていたため説明会ではいつも反対者の怒号が飛び交っていました。しかし無作為抽出のアンケート調査を行うと、70%の市民が実施すべきであるという結果であり、その矛盾に悩み、苦しむとともに、後ろ向きな各課の対応に怒り、諸処の対応に疲れ果てるという日々でした。

2016年のポートランドでの研修は、暗闇の先から射す一筋の光でした。西芝先生やダンをはじめ、多くの皆さんの話を聴き、いろんなものを見て考え、自分の考えていることを話し、私が仕事として取組んでいる“いま”と、ポートランド“いま”がはっきりとつながりました。それは悩み苦しんでいる現状が、しっかりと先の道筋につながっている、自分のしていることが決して間違いではないということを認識できたということでした。

研修の序盤では「市民に聴いてみる、市民に従う」というフレーズが多かったため、聴くべきタイミングと聴き方により、方向が全く異なることを体験していた私は、素直に耳を傾けることができませんでした。しかしある現場に行って私を覆っていた“鉄のよろい”は砕け散ります。その現場は「シティ・リペア」の現場でした。

「シティ・リペア」は、住宅街の交差点で減速せず通過する車に対して、なんとか減速させる方法をということで始まった市民活動です。交差点の路面を色とりどりにペイントするというものでした。その時の市当局の反応は、活動を禁止するというものであり、私たち日本人の感覚から違和感はないものでした。さらにその時とった市民の行動も、日頃私たちがよく耳にするようなもので、父を市の幹部に持つ関係者の友人のコネを頼りに交渉を試みるとか、議会の請願を経て正当性を訴えるというものでした。重要なのはここからで、そうした行動により、認められた後の行政の対応は、きちんと塗料の種類を指定することであったそうです。滑りにくい、視覚的な錯覚を起こさないと言った様々な試験を経て、指定の塗料を市が決めたということです。この行政の対応はとても真っ当な対応で、そうした真っ当な行政の対応は日本でもありうることです。

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市民が道路をペイントし始めた時、市が禁止をしたのは、いくら ”Keep Weird”の街とはいえ、安全性などに照らし、その価値観をすぐには理解できなかったのだと思います。しかしきちんと議論が尽くされ、価値が認められた後は、それぞれが役割をきちんとこなしていることは、私が苦しんでいる”いま”と、その先にある光の中の”いま”をつなぐ貴重なきっかけでした。

IMG_5811 (1)最終日前夜、PSUの近くにあるピザ屋でダンと話しました。その時私はダンにこう言いました。「色々貴重なことを教わったが、帰国後すぐに使える土産が欲しい。」すると彼は少し間をおいて話し始めました。

「近々住民説明会があると言っていたね。私もそのような場面は何度も経験がある。反対している市民がいつまでも大声で話し、手がつけられないこともある。その時はこちらから何かを話すのではなく、まず彼らの言い分を丸聴くことから始めるのさ。そして、いいか、ここからが大事だぞ。彼らの言うことをホワイトボードにそのまま書き続けるんだ。パソコンがあれば入力して、それをプロジェクターで映せばいい。延々とそれを続けるのさ。すると『おい!いつまで続けるんだ。早く説明を始めろよ。』という声が上がる。そこからようやく話し始めるのさ。」

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早速、帰国後に職場の課でこの話をしました。「そんなことをしたら反対意見が増えて、それに同調する人がいて、手をつけられなくなるのではないか?」と言われましたが、何とか説得をして試してみることにしました。いつもは市から説明を行い、その後市民からの意見を聴くという進め方でしたが、ダンの言うように逆にしてみました。パソコンとプロジェクターをもう1台ずつ準備をして、意見や質問に対して上司が応え、その横で私がその意見をパソコンで入力し、会場のスクリーンに映し出しました。

それぞれの意見を文字にしていくと明らかに状況に変化が起こりました。マイクを手にすると延々と持論を述べる人は、自分の言いたいことが文字になって前に映し出されると話が早く終わりました。汚い言葉を使う人は、文字になって眼前にその言葉が現れると、言葉遣いが変わりました。これらの人はいつも説明会に来るので、顔も覚えていますが、こういった人の質問が早く終わると、若い子育て世代の方などが質問を始めたり、私たちがとても勉強になるような建設的な意見が出てきたりしました。

習志野市での任期は、公共施設マネジメントの計画策定と、老朽化した公民館や図書館を統廃合し、駅前の公園と一体的に再生するPFI事業者との契約が済み、役割を無事に終えることができました。その時の経験を活かして、2017年より和光市で同様に取り組みを進めています。関わっていただいた市民の皆さんからは、「今までにない期待を感じる」、「とても楽しい」と言った言葉が聞かれるようになりました。こうしたことを一つずつ続けていける環境があるということはとても幸せなことであるし、それをさらに評価していただけるというのはありがたいことです。JaLoGoMaに参加をして、劇的なイノベーションはなかったかもしれませんが、自分を客観的に見つめ、捉える機会は唯一無二の場だと思います。”いま”があるのは間違いなく、ポートランドを訪問したあの時のおかげです。

 

岡田直晃

2009年東京財団週末学校参加時 津市(三重県)東京事務所職員

2016年JaLoGoMa参加時 習志野市(千葉県)政策財務部資産管理課主幹

2018年現在 和光市(埼玉県)企画部資産戦略課主幹

 

 

 

2017 O-JaLoGoMa プログラム Summary 完成!

気がつけば、もう11月。

ポートランドはもうすっかり秋の装いです。

2017年 O-JaLoGoMa プログラムのサマリーが出来上がりました。

O-JaLoGoMaとしてプログラムが開催されるのは今年が初!どんな内容だったのでしょうか?

是非ご一読ください!

↓↓ こちらから ↓↓

2017 Program Summary

宜しくお願いいたします!

グローカル学習、ポートランドでフィールドワーク

 

グローカル学習、ポートランドでフィールドワーク

草原 広樹(著)

(早稲田大学在学中、2016年9月~ 2017年5月 PSUに留学)

「グローカル」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?「グローバル(地球規模)」と「ローカル(地域)」を組み合わせた造語である。この「グローバルに考え、ローカルに行動する」という考え方が今、地方大学で盛んになっている。その背景には文科省が平成27年度から地方創生の一環として整備を進める「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業 (COC+)」がある。地域や企業との協働・連携推進をカリキュラムの一環として行う地方大学を支援する内容で、地域社会を担う人材育成が狙いだ。

 

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住民へ取材する学生たち

広島修道大学の「ひろみらプロジェクト」もそのCOC+事業参加大学プロジェクトの一つである。同大学では「ポートランド・グローカル・イノベーション セミナー」という、短期留学プログラムを今年スタートさせた。学生たちは「全米住みたい街No.1」とも称されることの多い、アメリカ西海岸に位置する地方都市ポートランドで、海外における都市政策と市民参加型社会の先進事例を学ぶ。

 

2017年2月中旬、学生10人が「全米住みたい街No.1」「環境に優しい街」として知られるアメリカオレゴン州、ポートランドに降り立った。本プログラムは私立広島修道大学の地域イノベーションコースのプログラムの一環である。プログラムをコーディネートするのは、去年広島修道大学と提携したポートランド州立大学の公共サービス研究実践センター。

東京財団主催による、地方公務員の人材育成プログラムの研修地としての13年以上の豊富な経験を生かす。街づくりといえば建物等の「ハード」が注目されがちだが、住民主体の街づくりや、行政やNPOの役割という側面など、ポートランドの「ソフト」の面を研究する、いわばポートランドの「知の拠点」だ。

本プログラムに参加する以前から、広島修道大学の学生たちは地元に強い関心を持って1年次から上記「地域イノベーションコース」で、受講してきた。座学だけでなく、数人ごとのグループで大学を飛び出して、過疎化や高齢化等が深刻な中山間地域で課題を解決するロジェクトを行ったり、空き家を地域の情報拠点として活用する為にリノベーションしたりした。

中山間地域と都市間の交流を目指して、特産品を生かした商品開発の企画から広報、販促までを行うグループもあった。いずれも学生が主体的に動き、地域と大学の距離が近いのが特徴だ。自分たちの地元にいかに知見を持ち帰るのか、街づくりの成功事例として知られるポートランドでその秘密を探るために気合い十分の表情をしていた。

プログラム内容は授業とフィールドワークで構成される。授業内容は、ポートランドの歴史から、市民参加促進の仕組み作り、日本と異なるアメリカの法制度、サステナブルな街作り、スモールビジネス、都市近郊型農業まで多岐にわたる。

フィールドワーク先では「本当に住みやすい街なのか」生の声を求めて街角でインタビューや、再開発エリアの観察、今のポートランドを陰日向で作ってきた行政官やNPO団体代表への通訳を介しての質疑応答の機会が設けられた。理論と実践が組み合わされたことで、全身でポートランドを感じるプログラムとなっていた。休み時間には日本語を学ぶ現地の学生と交流した。

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街を歩きながら、ポートランドの魅力を探る

プログラムでは物事を色眼鏡で見ず、多角的に、ありのままに見ることが参加者に共有された。これはポートランドをただモデル都市として見るのではなく、ポートランドを通じて、地元広島の魅力を「再発見」することが目的の一つにあるためだ。

 

渡米前に事前講義を通じて、「なぜポートランドが住みたい街全米No.1なのか」を一通り学んできた参加者だったが、実際に街を歩いて見えてきたのは住みやすさと同時に、人口流入による土地価格の上昇や、アメリカならではの車社会がもたらす交通渋滞の深刻化、ホームレスの増加等、地元広島とは大きく異なる社会問題だった。

渡邊 遥さんは、「事前学習ではある意味でバラ色の『理想都市ポートランド』をなぞっていただけかもしれない。それは市民が主体的に声をあげ、行政が市民の声を全てすくい上げ、政策に反映させるというイメージだった。しかし実際に街を歩き、インタビューをしたことで自分の考えは少し変わった。それは市民の不満や地域課題が完全に解決されているかどうかは最重要ではないということだ。大事なことは、行政やNPOによって今なされている課題への対処策が、地元の住民に共有されていることではないか」と話す。

学校向けに体験農業を提供したり、地域の人々の憩いの場になっている農場「Jeans Farm」の見学などを通じて、波志 千幸来さんは自身の持つ農業へのイメージが変わったという。

渡米前から、前述した大学プログラムを通じ1年間かけて農業が盛んな中山間地域でプロジェクトを行なっていたものの、農業に対して、「高齢者が中心でしんどい仕事」というネガティヴなイメージがどうしてもあったと語る。

しかしポートランドでは「農業は若者が中心的な担い手であり、皆で協働する仕事、そして次世代へ橋渡しをすることができる」とポジティヴに捉えた。百聞は一見にしかずとはまさにこのことだろう。

毎週末にポートランド州立大学構内で行われるのは、「ファーマーズマーケット」という多くのブースが並ぶイベントだ。地域の人たちの手作り野菜やジャム、加工品を販売するブースが立ち並び、大勢の人で賑わう。

日本における産直市の世代年齢の幅を広げ、カジュアルにしたイメージだ。地元のバンド演奏が穏やかな休日の空間を演出している。ここでも農業に対する価値観、印象の変化を感じた学生も多かったようだ。

ファーマーズマーケットを見て、「地元の人が大学構内に普通に入っているのが良い」と少し毛色が異なる感想を漏らしたのは、冨永 里歩さんだ。一見些細に思える気づきも、以前に大学のプログラムで地域の住民に「地元の大学に何を望むのか」聞き取りをした際に、「大学に入りづらい」という声を聞いた経験があってこそだ。同じものを見ても感想や学びは多彩だ。

ポートランドを一躍有名にした再開発の成功事例「パール地区」を見学した。20年前から開発に関わったポートランド州立大学教授サラさんは「住民の意見を街づくりに反映させる仕組みであるコミュニティー(ネイバーフッド)はポートランドの街つくりの住民参加の成功の源として美化されがちだ。

しかし、決してシステマティックで綺麗なものではない」という。「自分たちの地元をより良くするための、泥臭い会話、集会の場をわざわざ外国から見にきてくれる人々を見て、地域の人たちは非常に誇らしく感じる」とも付け加える。

フィールドワークとインタビューを終えて、地元広島へ持ち帰る知見を得られたか、地元の魅力を再発見したか、という筆者の質問に対し、波志 千幸来さんは「地域でプロジェクトを頑張っている時に自分たちが何をやっているのかわからなくなる時が時々あった。自分たちのプロジェクトを客観視することができたかもしれない」と答えてくれた。

プログラムの最後は、学生たちの学びの総括と発表で締めくくられた。

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最終日のプレゼンテーション後

「情報密度の濃い授業とフィールドワークで最初圧倒されたが、今までの人生で一番濃密な十日間であっという間だった」という率直な感想から、「過疎や高齢化社会では人口増加が万能な正解だと思っていた。しかし人口増加は家賃の高騰や多様性の尊重という新たな問題を生んでいる。物事には必ず良い面だけでなく悪い面がある」「今まで『地域活性化』をモットーに、集客を目指して特産品の販売、プロモーティングを頑張ってきたけれど、こちらの体験を経て、自分たちがやってきたことが果たして地元の方々が本当に望んでいたことなのかわからなくなった」という気づきも次々と上がった。

 

筆者はどれも渡米前に地元で街作りや地域活性化を真剣に考え、実践してきた学生ならではの問いを深めた言葉だと思った。

日本に興味があるアメリカ人学生だけでなく、行政学や市民活動等の専門家も参加した客席からは、「ポートランドの発展の要となったボトムアップの政策合意形成は積極的な市民参加があってこそだ。そのためにも市民の意見や感情をどうすくい上げるのかが重要だ。ではそこで自分たちの地元への愛着や情熱をどう地域つくりに繋げるのか」など、プログラム参加者の熱気に負けない質問が投げかけられた。

最後に沖尾 祥之さんは「大学生として地域に入りプロジェクトをすることは、その街や村を盛り上げるのに有効だと思っている。この経験を糧にして今後より発展させたい」と語りプログラムを締めくくった。

本プログラムの帰国報告会は一般公開で3月14日(火)に広島修道大学で行われる。プログラム一期生であると同時に、社会への最初の一歩となる就職活動を控えた彼らが、ポートランドで何を見て、体験し、学んだのか。

その学びをどう自分たちのプログラムで活かすのか。短期間ながらも濃密なポートランド滞在を経て再発見した地元広島の魅力とはー。彼ら自身の言葉でグローカルな学びを語ってくれるに違いない。地域と大学が一体となった場所で、彼らのグローカルな学びは続く。

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◆ボランティアとしての感想

筆者は本プログラム受け入れ先(ポートランド州立大学公共サービス研究実践センター)でインターンをしている留学生で、ボランティアとして関わった。

街角でのインタビュー等を行う機会でも、言葉の壁に怯まない彼らには、学びへの強い意思を感じた。毎日深夜まで話し合いを重ねるほどの、海外という非日常的な興奮を差し引いても余りある高いモチベーションはどこからくるのか。

「プログラムに選ばれなかった友人もいるから。。」というどこかひっそりとした答えには、学びを持ち帰る場があることの大切さと、この短期留学プログラムを自分たちだけの楽しい体験で終わらせない友人達への思いが宿っていた。

彼らのように「故郷」とも言える地域に対する強い思いを持つ学生が、グローバル都市を目指す東京にどれほどいるだろう?「グローバルに考え、ローカルに行動する」という「グローカル」をまさに体現する学生と留学プログラムだったように思う。

通訳の言葉に耳をすませ、自分の言葉で疑問を投げる同世代の学びの姿勢は、海外体験を通じて過去の日本での自身の経験と価値観を客観視、相対化することの意義を、日々の課題にただ忙殺されていた私に改めて教えてくれた。

体験が言葉になり、行動となって社会に変化を起こすには時間がかかるに違いない。今回の学びもどんな形でプログラム経験者の中で、実を結ぶかはまだわからない。しかし地域に知識を還元するという姿勢はプログラム参加者が皆共有していたように思う。

「誰かのために」そして「チームとして」学ぶことの魅力を感じた。彼らのグローカルな学びが芽吹く土壌は広島にあるのだろうか。広島修道大学は学生の8割が広島出身であり、6割は広島に就職する、まさに地域と共に生きる大学だ。イノベーションにおける人材の多様性の重要性が叫ばれる一方で、人材流動化の停滞と地域課題解決に有為な人材育成という、矛盾するかのような課題を大学と地方は抱えている。「グローカル・イノベーション」を掲げた本留学プログラムは地方大学の未来を占う試金石になりうるだろう。

*この記事は

オルタナS 及び ヤフーニュース

にて、2017/3/14(火) 13:25に配信されております。*

Depave(デイペーブ)の活動に参加して  ~ポートランドのコンクリートを減らそう~

depaveDepave(デイペーブ)の活動に参加して  ~ポートランドのコンクリートを減らそう~

並木良太(著)

(早稲田大学4年、2015年9月~2016年9月PSUに留学)

2016年7月30日にDepave (デイペーブ)というポートランドを中心に活動しているNPO団体のボランティア活動に参加してきました。Depaveはグリーンスペースを作り、また、雨水の川への流出を防ぐために都市から不必要なコンクリートやアスファルトを取り除く活動をしている団体です。私はポートランドに留学したのがきっかけで、環境について興味を持つようになりました。街と自然が一体となっているポートランドはどのように作られどのように成長してきたのかを知る機会になると思いこの団体の活動にボランティアとして参加しました。

英語で“pave”はコンクリートやアスファルトで舗装するという意味です。この単語に接頭辞の”de”がつくと否定形となり、“depave”とはコンクリートやアスファルトを取り除く、という意味になります。今回で二回目のボランテイア活動への参加だったのですが、今回のプロジェクトはヒューマン・ソリューション・ファミリーセンター(Human Solutions Family Center)の4,000 square feet(370平方メートル)ものコンクリートを取り除くというものでした。所要時間は朝の9時から
昼食後の午後1時までの4時間ですが、遅れてきても、早めに帰ってもいいので気軽に参加できます。

午前9時。Human Solutions Family Centerに到着しました。ボランテイア参加者はなんと100人近くいました。まずは簡単な登録をdepave_1し、名札をもらいます。ちなみに私の名前は良太ですが、”Ryo”という発音は英語圏の人には発音しづらいのでこのような初対面の人と会う場では”Yo”と名乗っています。簡単な名前の方が打ち解けやすいですよね!事前にDepaveのホームページ上で登録が必要ですが、登録するのを忘れてしまっても、当日行けば何の問題もなく参加する事が出来ます。

 

登録をすませたら早速ボランティアスタート!!depave_2

といきたいところですが、まずは腹ごしらえ。

コーヒー、パン、ケーキ、フルーツなどとても充実した朝食が準備されていました。日中は暑くなるので水分補給もこまめにとるようにアドバイスをうけました。

 

腹ごしらえを終えて、いよいよdepaveスタート!

予想以上の重労働になるため簡単なオリエンテーションを受け、準備体操をし、道具の使い方やdepaveする際の注意点をスタッフから聞きます。depave_3

Depaveに当っては写真にある細長い鉄の棒を使ってあらかじめカットされているコンクリートを砕きます。

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コンクリートの一部を取り除く事が出来たら、後はてこの原理を利用して、一つ一つコンクリートを地面から剥がして行きます。

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はがしたコンクリートは小さく砕きカートに乗せ写真にあるコンテナに運びます。

砕いたコンクリートをカートで運ぶ作業が最も力を必要としてとても大変でした。

この巨大なコンテナがコンクリートで一杯になるのですから、ものすごい量ですよね。

日本でもボランティアに参加した事がありますが、ポートランドでのボランティアと日本でのボランティアの大きな違いは、ポートランドでは皆が楽しんでボランティアをしているという事です。

例えば、ボランティア活動中に生バンドの演奏がありました!!depave_8

ボランティア活動中のBGMが生バンド演奏なんてとても贅沢ですね。

他にも子どもたちが遊びながら楽しめるように、キッズスペースが設けられていました。パパ、ママがボランティアしてる間におばあちゃん、おじいちゃんと遊んでいるという家族単位でのボランティア参加も見られ、とても地域に密着した活動であると実感しました。

なぜコンクリートを取り除くのかというと、コンクリートの上を流れる雨水は汚染物も同時に川まで流してしまうからです。水質汚染だけでなく河川の生態系も壊しかねません。「何より、一面コンクリートの景色より、緑が多い景色の方がきもちいいですよね?」

これはボランティア参加者の方とお話をしているときに聞けた言葉です。depave-11論理的なアプローチももちろんですが、自然と共存する考え方が根付いているポートランドだからこその言葉だと思いました。

地域密着型のボランティアで、家族そろって参加できる。そうする事で子どもたちはその精神を受け継いでいく。

今回参加した一つのボランティア活動のなかにも全米でNo.1のサステイナブルな町ポートランドを感じる事ができました。

Ground Rule ~話し合いをするための基本ルール~

 

Ground Rule  〜話し合いをするための基本ルール〜

飯迫八千代、西芝雅美、Josh Metzler(著)

先のJaLoGoMa TimesでLegislative Advocacy 101のイベントを紹介させて頂きましたが、その際に、住民とのやり取りをする上で良いアプローチだなと思ったものがありましたので、紹介させていただきます。

パネリストのコメントが終わり、参加者からの質問とディスカッションに移る際に、モデレーターとONIの職員からディスカッションをするにあたっての「お願いごと」がありました。その、お願い事は、「グラウンド・ルール(Ground Rules)」と言われていて、話し合いをスムーズに進めるために参加者全員が念頭においておく約束事、話し合いの基本ルールです。

今回のデイスカッションのグラウンド・ルールには4つの項目がありました。

  1. 相手の話を敬意をもって良く聴くこと
  2. 「私」を主語に自分の経験から話をすること。「彼ら」、「私達」、「貴方」などを主語にし、他人事としてのスタンスで話をしないこと。
  3. 考えやアイディアに焦点を当て議論をして、個人攻撃をしないこと
  4. 自分の意見を述べたら、他の人に順番を譲ること

こうしたグラウンド・ルールがあることで、参加者達が建設的に意見を述べるように努め、話し合いがパネリストや他人に対する不平・不満のみを述べるような一方通行の場にならず、一緒に議論し、すべての人が有益だったと思える場作りが出来るのだと感じました。実際に、会場からは多くの質問が出て、それぞれのパネリストが自分の言葉で質問に対する意見を述べていました。パネリストもグラウンド・ルールに従って、どんな質問にも敬意を持って耳を傾け、自分の経験身基づいた、建設的な回答をしていました。

実はJaLoGoMa プログラムでもこのグラウンド・ルールを取り入れています。参考までにJaLoGoMaプログラムのグラウンド・ルールは“PECCO 原則”と言っており、下記の通りです。

PECCO” Principles  “PECCO” 原則

  1. ]Be prepared. 事前準備をしっかりしましょう。
  2. ]Treat everyone as equals. 誰とも対等の立場で接しましょう。
  3. ]Facilitate constructive dialogue and discussion. 建設的な対話の促進に努めましょう。
  4. [C]Challenge yourself and try new things. 新しいものにチャレンジしましょう。
  5. ]Be open-minded. (Take off your cultural sunglasses). 色眼鏡をかけず、物事を広い視野と心で見ましょう。

グラウンド・ルールは話し合いの目的、参加者の特質などによって、様々なバリエーションが考えられます。皆さんも話し合いをされる際、グラウンド・ルールをつくり、より効果的な話し合いの場作りに心がけてみてはいかがでしょうか。

Legislative Advocacy 101〜ポートランド市が住民向けに「ロビイスト」になるための講座を開催〜

Legislative Advocacy 101〜ポートランド市が住民向けに「ロビイスト」になるための講座を開催〜

飯迫八千代・西芝雅美・Josh Metzler(著)

 

101 012015年12月3日にポートランド市が住民向けの「Legislative Advocacy 101」というイベントを開催しました。このイベントは住民が「ロビイスト」として政策や立法プロセスに効果的に意見を反映するための初級講座のようなものです。今回は、このイベントの内容を、参加した3名(飯迫、西芝、Metzler)の感想を交えながら紹介します。

このイベントはポートランド市の「渉外課(Government Relations)」以前JaLoGoMa Times でも紹介したONI (オフィス・オブ・ネイバーフッド・インボルブメント)と、ポートランド市議会議員(コミッショナー)アマンダ・フリッツ氏の事務所と協力して開催したものです。

このイベントの目的は、大きく分けて2つ。1つ目は、2016年度のオレゴン州議会と第115回連邦議会で取り上げられると思われる重要な議案を住民に周知する事。2つ目は州議会、連邦議会での審議に効果的に住民の意見を反映させるために住民にノウハウを提供することです。イベントは、連邦政府、州政府、市、そしてコミュニティ組織の代表者によるパネルディスカッション形式で、パネリストはモデレーターの質問に答える形でそれぞれの経験談を共有しながら、住民に政策立案プロセスをわかりやすく説明し、住民の関心事項を政策に反映させるためのヒントを話てくれました。

パネリストは以下の4名:

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    市役所のホールにてパネリストと参加者

    オレゴン州政府上院議員:エリザベス・ステイナー・ヘイワード氏

  2. ポートランド市コミッショナー(議員):アマンダ・フリッツ氏
  3. アメリカ連邦政府上院議員ジェフ・マークリー氏のフィールドディレクター:ジョネル・ベル氏
  4. CIO (The Center for Intercultural Organizing) – 異文化オーガナイジングセンター(移民主体の組織)エグゼクティブディレクター:ケイシー・ジャマ氏

 

モデレーター:渉外課エグゼクティブディレクター:マーサ・ペリグリーノ氏

住民が参加しやすくするための工夫

このイベントでは、政策立案プロセスにあまりなじみのない一般住民でも気軽に参加できるように、いくつかの工夫がなされていました。まずは開催日時と時間です。イベントを平日の夜6時から8時の時間帯で市役所のホールで開催する事で、ダウンタウンで仕事をしている人が仕事がえりに参加しやすくしていました。会場には、水やジュース、クッキーなどのお菓子が用意されていて、自由に食べながら、話を聴くといったインフォーマルな雰囲気作りがなされていました。また、手話とスペイン語の同時通訳が入って、難聴者や第一言語が英語ではない、ラテン系移民の方々に対するサービスも提供されていました。ちなみにONIは同時通訳機器をネイバーフッド会議などで必要な際は無料で貸し出しをしているそうです。

 

イベントの流れ

イベントはまずモデレーターがパネリストを紹介し、その後、今回会場にどういう人たちが参加しているのかを把握するためにいくつか質問をすることから始まりました。ざっと見回す限り、参加者は10代くらいの学生から70代くらいの方まで男女幅広く、合計80人弱いました。

モデレーターから参加者への質問は、「今まで自分の住んでいる地域の議員に会ったことはありますか」、「その議員に対してお願い事を申し出たことはありますか」や、「市議会や州議会が実際に開かれている現場を見に行ったことがありますか」など。今回参加していた方々の多くは、すでに何らかの形で議員や議会との接触を持っていた人々で、モデレーターも、「前回同じようなイベントを行ったときより、今夜は経験がある人たちが多いようですね」と言っていました。

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会場入り口で配布された資料

参加者の平均経験値を把握した後は、オレゴン州上院議員のエリザベス・ステイナー・ヘイワード氏がパワーポイントを使って15分ほど行政の構造や政策立案プロセスの簡単な紹介とよく使われる専門用語の説明などをしてくれました。その後、オレゴン州政府の職員から、州レベルの議員や委員会で議論されている法案がホームページにどう記載されていて、どこで情報を得ることが出来るのか、またどうすれば議会の様子をオンラインで生で見ることが出来るのか等の説明がありました。イベント会場の入り口に、法案が出来るまでの流れを分かりやすく絵で説明した資料や、オレゴン州やポートランド市議員の名前・Eメール・電話番号リスト、議員と話をするうえでどのようなコミュニケーションツールが効果的か等の資料も用意されていて、情報はとても豊富でした。

基本的な情報提供の後は、4人のパネリストに対してモデレーターがいくつか質問をする形で話が進められ、最後に参加者からの質問とデイスカッション時間が割かれてました。

 

住民ロビイストになるためのアドバイス

パネリストから住民ロビイストに対して様々なアドバイスが挙げられました。その中でも、特に印象的だった内容を箇条書きでまとめてみました。

<人間関係の大事さについて>

  • 議員は有権者の意見を重要だと思っており、だからこそ最初から有権者と共に解決策を考えたいと考えているはず。住民ロビイストは地域の先駆者として議員と共に前進するための機会を大切にしてほしい。
  • パッションを持って問題解決に取り組むことは大切であるが、仮に意見が合わなかった場合でも相手を尊重し礼儀を忘れないで接触することが大事。(議員も人なので怒鳴りあいの喧嘩になった人より、冷静に話し合いが出来る人と長いお付き合いをもとうとする)
  • 議員のスタッフや職員は重要。実際に物事を実行に移すのはスタッフであり、スタッフとの信頼関係を維持することが大切。
  • ネットワークを大切にすること。個人や小さな団体が単独では説得力が無いことでも、ネットワークを作り、協力して活動を展開することで、より効果がえられる。
  • ネットワークは一度途絶えてしまうと、修復が難しいので、継続してネットワークを維持する努力が必要。

 

<コミュニケーションの仕方について>

  • 議員と会う際、限られた時間内で自分のポイントをついて話をし、何を求めているかを明確に提示する事。また相手が話す機会を与えること。
  • 良い聞き役に徹すること。
  • 事前に下調べをきちんとしておくこと。
  • メディア報道を一方的に信じず、疑問に思ったら直接議員やスタッフに確認すること。
  • 知らないことを知らないと認めること。

パネリストのアドバイスは自身の経験を踏まえた具体的なとても説得力のあるものでした。

最後になりますが、このイベントを通して最も印象的だったことは、パネリストがオレゴン州レベルの議員から連邦政府レベルのスタッフ、市役所の議員やコミュニティ組織の代表者と多彩だったことです。この多様なパネリストのラインアップは主催者側に、出来るだけ幅広いアドバイスを多様なニーズを持つ住民に与えようという意図があったからだと思います。こうした機会を住民に提供することで、これからもポートランド市やオレゴン州が住民と協力してよりよいコミュニティや社会作りに貢献していこうという行政側の姿勢に感銘を受けました。

〜ポートランドでのボランティア活動を通じて〜

〜ポートランドでのボランティア活動を通じて〜

井上 愛 (著)

私は、ポートランドに滞在して半年が経ちます。知人が「近くでボランティア活動をしているので参加してみないか」と誘ってくれ、4ヶ月前から週1回参加するようになりました。今回はそのボランティア活動について、また、その活動を通じて感じたことを紹介したいと思います。

私が参加しているボランティアは、ポートランド州立大学より徒歩6分程の、St. Stephen’s Episcopal Parishという教会での「Clay Street Table」(以下、CST)という活動です。この組織では、ホームレスの人々や、日頃の食事に困っている人々に、週数回無料で食事を提供しています。組織のマネジメントは教会の牧師が行っていますが、参加しているスタッフのほとんどは、近所の人々で、近隣の学校や他教会から来ています。私は「Saturday breakfast」という、毎週土曜日に朝食を提供する会に参加しています。

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ある日のメニュー

スタッフの人数は毎週変動しますが、およそ15名程度で約200人分の朝食を作っています。食材は、オレゴン・フードバンク(国や企業、有志市民等から寄付された食糧を提供する非営利組織)、近隣企業・市民からのCSTへの寄付等で賄われています。

ボランティア中に個人的に苦戦しているのはやはり英語です。私は英語力の向上と大学での研究のために滞在していますが、授業での比較的「丁寧な」英語とは異なり、ボランテイアの現場では容赦無くスピードの早い英語でスラングや教科書等にはなかなか出てこない生活に根ざした用語、表現、固有名詞等が飛び交いますので、聞き取れない場面が多々あります。

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食堂の様子

例えば、飲み物のジュースが無くなり、リーダーにジュースのストックはどこにあるかを尋ねた時、「ああ、Eggnogが地下の冷蔵庫にあるよ」という回答が返ってきました。Eggnogが何かを知らず、Eggから連想してパンケーキの材料か何かかと勘違いした私は、「材料では無くて飲みもの!」と答えてしまい、「だからEggnogが地下に…」というやりとりを何往復かしていたところ、別のスタッフから「Eggnogは飲みものだよ!こちらでは有名なの!」と説明してもらってやっと誤解が解けたということもありました。

 

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ボランティアスタッフ

先述の通り、ボランテイア活動の対象者はホームレスの方が多いのですが、ポートランドの街を歩くとホームレスを見かけることが多いなと感じます。2015年1月時点でのポートランド都市圏(ポートランド市、グレシャム市、マルトノマ・カウンティー)の人口は約70万人[i]ですが、うち3,801人はホームレスだそうです。比較対象として東京を見てみると、人口約1300万人に対して1,719人[ii]です。なお、アメリカ全土のホームレスの数は564,708人で、オレゴン州全体では13,226人、州別に見るとオレゴンは上から9番目の数です[iii]。日本は全国で7,508人[iv]、全人口に対するホームレスの割合は約0.00006%となります。アメリカは約0.0018%であり、割合としては日本の約30倍となります。

ポートランドにホームレスが多い要因として、リベラルな風土で治安も良く、ホームレスへの支援が充実しているため集まりやすいのではないか、とCSTのマネージャーから伺ったことがあります。実際、ポートランドで行われているボランティア一覧サイトを覗いてみると、CSTだけで無く、他の教会、非営利団体等多くの団体が、様々なアプローチでホームレス支援を行っています(シャワー・トイレ・洗濯の場の提供、健康診断、シェルターの運営、住宅確保等)。

ポートランドは、市政に対する積極的な市民参加がなされていると言われていますが、ホームレス支援のみならず、街・公園の清掃、環境保護、イベントスタッフ等多種多様なボランティア活動が非常に盛んなことからも、地域社会に対する個々人の意識が高いという印象を受けています。

ボランティア活動に話をもどしますが、なぜ、ポートランドの人々が当たり前のことのようにボランティアをするのかかが不思議で、CSTの高校生の参加者に理由を聞いてみました。すると「だって、楽しいじゃない?ここで友達もできて、おしゃべりもできて、自分の居場所の一つとなっているよ。ホームレス問題の根本的な解決にならないのはわかっているけど、根深い問題だからこそ、すぐにどうこうできるものでは無いじゃない?だからこそ、今この瞬間は、私は友達と会うために楽しみながらご飯を作って、ホームレスの人々には当面の空腹を満たしてもらって…お互いに良いことがあるのなら、それで良いのかなって。」と返ってきました。また、CSTのマネージャーは以前「この活動の目標の一つは、コミュニティーを作ること。ホームレスになる原因は色々あるけれど、お互いがお互いを気遣い合うコミュニティーがあれば、ホームレスになることを防ぐことができる可能性が高まると思っている。その結果、そのコミュニティー・社会は全員にとって良いものとなる。」と話していたことがあります。これらの話を通じて、自分自身が楽しみたい、快適に暮らしたい、居心地の良い場所にいたい、という思いが、地域社会への高い意識につながっているのだなと感じました。

自分自身の幸せのために、社会に対してどう行動すべきなのか。社会全体の利益のために、個々人にどうアプローチしたら良いのか。しとしと降る雨に傘もささずに歩く人々を、ダウンタウンのカフェの窓からぼんやり眺めながら、今日も考えさせられています。

 

[i] Portland Plan Atlas

http://www.portlandonline.com/portlandplan/index.cfm?a=288104&c=52257

グレシャム市ホームページ

http://greshamoregon.gov/city/city-departments/economic-development/expand-and-locate-here/template.aspx?id=282455

 

[ii] 厚生労働省 平成24年「ホームレスの実態に関する全国調査検討会」報告書

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002rdwu-att/2r9852000002re1x.pdf

 

[iii] アメリカ住宅都市開発省 The 2015 Annual Homeless Assessment Report (AHAR) to Congress

https://www.hudexchange.info/resources/documents/2015-AHAR-Part-1.pdf

 

[iv] 厚生労働省 ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000083546.html

 

〜「メリークリスマス!」と多文化共生〜

~「メリークリスマス!」と多文化共生~

菊地 真巨(著)

アメリカの街は11月末の感謝祭が終わった翌日から、赤白緑と金銀のクリスマスカラーに彩られます。街中に大きなクリスマスツリーが飾られ、サンタクロースの帽子をかぶって歩く人も目にします。が、日々の暮らしの中では、意外なほど「メリークリスマス」という言葉Holi03を聞くことはありません。職場の同僚やご近所さんとの間で交わされる挨拶は、「ハッピーホリデーズ!」が普通ですし、クリスマス時期を指すのは「ホリデーシーズン」、クリスマスプレゼントの代わりに「ホリデーギフト」という言葉が使われる場合がほとんど。多くの会社はこの時期、クリスマスパーティではなく、「ホリデーパーティ」を開きます。これには、様々な文化が混在しているアメリカという国ならではの理由があるのです。

クリスマスの起源には諸説あり、元々はキリスト教とは直接関係ないとも言われます。それでもアメリカ文化の中で、クリスマスとキリスト教は深く結びついており、キリスト教にとっては大事な宗教的祭日です。熱心な信者はイエス・キリスト降誕を祝って礼拝に参加しますし、多くのアメリカ人が日本のお正月やお盆のように、遠路はるばる故郷に戻って家族と過ごします(帰省ラッシュも起こります)。また、国の祝日として、多くの企業はもちろん政府や公的機関も休みとなり、レストランや小売店も休業します。

このように、クリスマスはアメリカの一大イベントなのですが、それと同時に、クリスマスを祝わない人、クリスマス以外の祭日を祝う人もたくさんいるのです。仏教やイスラム教、ヒンズー教にはHoli01クリスマスは関係ありませんし、ユダヤ人にとって12月は「ハヌカー」というユダヤ教のお祭りの時期
(年によって前後するが、11月末から12月後半)です。また、アフリカ系アメリカ人の中には、12月26日から1月1日まで「クワンザー(Kwanzaa)」(1960年代にアメリカで始まった、アフリカからのルーツを称える祝い)を祝う人もいます。

「私はクリスマスを祝うけれども、私の同僚はクリスマスを祝わないかもしれない」あるいは、「私はクリスマスは祝わないけれども、私の隣人はクリスマス、ハヌカー、もしくはクワンザを祝っているかもしれない」

笑顔で交わされる「ハッピーホリデーズ!」という言葉には、自分以外の人の文化や宗教も尊重しながら共生をめざす、アメリカ人の気遣いとバランス感覚が込められているように思われます。Holi02